第70回小学校高学年の部 最優秀作品

「心の世界を広げたい」
 横浜市立相沢小 5年 松村和将

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 絶対に正しい考えって、本当はどこにもないのかもしれない。ラウレンゾーが好きな本の作家、ラヴィニアの家のドアは、コスモポリタン連邦とつながっているはずだった。しかし、ドアのむこうの正体が分かってから、ぼくはなんだか正解がはっきりしない問題を解いているような気分になった。どうしても答え合わせがしたくなって、気がついたらぼくは、本を読み返していた。すると、完ぺきなひとつだけの正解がないのは、答えがたくさんあるからだと気がついた。ぼくが予想するいくつかの答えは、たぶんどれも正解で、だけどそれだけがすべてではない。ラヴィニアの家のドアがたくさんあるように、ぼく以外の人が考えた答えも正解だからだ。人の数だけ、考えの数だけ国がある。コスモポリタン連邦はきっと無限に広がっているんだ!

 ぼくの頭の中はいつもいそがしい。目や耳から入った気になる情報が、まるで自転車の車輪のように脳の中でフル回転する。考えたことを全部言いたくなり、まとまらず、うまく伝えられない。よけいな事を言ってしまう時もある。4年生のころ、そのせいでなかなかクラスになじめず、友達からは変わっているねと言われて落ちこんだ。そんな時、クラスの担任の先生から、和将さんはまるで「こどもエジソン」だと言われた。エジソンは有名な発明家だけど、子どものころはぼくみたいに、好奇心おうせいで変わっていると言われていたそうだ。ぼくの担任の先生は、「得意な事や苦手な事があって当たり前。色んな子がいていいんだよ。和将さんの発想力はとても素晴らしいよ」と言ってくれた。ぼくはとてもうれしくて、自信がなくなったり、自分のことがイヤになる度に、この言葉を思い出して心のお守りにしている。ラウレンゾーのクラスのトム先生は、みんなの意見を否定せず、おもしろいと言ってくれる所がぼくの先生と似ている。そして、ぼくはぼくの考えを大切にしながら友達の話にも興味をもって最後までしっかり聞こうと意識するようになった。トム先生やぼくの担任の先生のように、自分と考え方がちがっていても、「そんな考えもあるんだね、おもしろいね」と最初に言える人になりたいからだ。色々な人がいるからこそ、おたがいに学びがあり新しいアイディアもうまれるのだ。

 ラウレンゾーとクラスの子は、ドアのむこうから、ぼくが期待したような不思議な国を冒険することはなかった。でも、みんなはすでに冒険に出発していたんだと思う。パスポートやビザ作りを通して、相手の話に興味を持って聞き考えることは、自分の心の世界を広げる冒険みたいだ。ぼくもこれからまだ見たこともない、とっておきの世界に出会うために、冒険をしている最中なのかもしれない。

 この本を読んで、自分のことも他の人のこともそん重し、大切にしようと改めて決意した。ぼくは、ぼくだけの無限の世界を、今とこれから出会う友達と一緒に広げていきたい。

 

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●読んだ本「ドアのむこうの国へのパスポート」(岩波書店)
トンケ・ドラフト、リンデルト・クロムハウト・作 リンデ・ファース・絵 西村由美・訳

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