第69回小学校高学年の部 優秀作品

「皆が魔女で素敵な世界」
 福岡県福岡市立千早小 5年 安達和奏

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 何度読んでも心が締め付けられ、誰がどうするべきだったのか正しい答えが出なかった。なぜか?それは登場人物それぞれの気持ちがどれも理解できたからだ。アディの考えや努力、エミリーの意地悪な言動やその理由を知り、正解は一つではなく、いろんな事が複雑に関係しているのだと分かった。だからこそ大事なのは「続ける事」だと思った。考え続ける事や理解し続ける事、そして行動し続ける事。なぜなら皆違う個性を持った人間で、それぞれの強みや弱みを認め合いながら世の中が成り立っているからだ。「私だって昔に生まれていたら魔女だったかもしれない」と思いながらこの本を読み返していた。

 主人公のアディは感受性が強く、物事の捉え方も人と違うなど自閉的な個性を持っている女の子だ。学校でのトラブル以外に、家族の中でも双子の姉ニナと複雑な関係があった。

 この物語で一番印象的だったのはアディが大事にしている類語辞典が破かれた場面だ。感情表現が苦手なアディにとって類語辞典は自分の気持ちに合った言葉や伝わりやすい言葉を選ぶために必要な道具なのだ。もし私が同じ事をされたら我慢できずにひどい言葉をぶつけていたかもしれない。最初読んだ時は「エミリー=悪者」だったが、その考えは少しずつ変わっていった。エミリーが父親と本屋を訪れた場面で、本を読むのが苦手な事や親に軽べつされている悔しさがある事を知った。もちろんそれが誰かを傷つけて良い理由にはならない。しかしエミリーの意地悪な言動を改めるには、彼女の心の中をしっかり理解する事が大切だと思った。

 もう一つこの本で深く考えたことがある。それは、いざという時に誰かを守る勇気が出せるかという事だ。「類語辞典」事件の時、エミリーに立ち向かったオードリー、一方的にアディを責めるマーフィ先生に意見したキーディ。相手が大勢や年上でも、勇気が出せるのか。私にそのような経験はないが、例えば授業で話し合う時もなるべく大勢の意見に合わせたり、周りの目を気にしたりすることがある。でも本当に友達が大変な時は、自分の考えで行動できる勇気や強さを持っていたいと思った。それが本当の友達だからだ。

 幼い頃は思うがままの言動が許されていた。成長を重ねながらきっと誰もが仮面をかぶり「上手くいく事」を優先していく。大人になるためには、そういうことも必要なのかもしれない。その仮面の下で悩みながら見えない努力をし続けていくのだろう。見えていることだけで決めつけるのではなく、見えていない部分にも目を向け、しっかり考え続ける事や理解し続ける事を大切にしていく必要がある。一人一人が違うからこそお互いに支え合いながら生きていける。私も誰かの支えになれる人でありたいと心から思った。「人と違う=魔女」ではなく、「違いを認め合える魔女」が増えて、皆が生きやすい世の中になるよう私も努力し続けようと心に誓った。

 

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●読んだ本「魔女だったかもしれないわたし」(PHP研究所)
エル・マクニコル・著 櫛田理絵・訳

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