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「えっ。ハチを食べるなんてうそでしょ。」
ご飯にハチの子をかけて、おいしそうに食べる女の子の写真に、ぼくの目はくぎ付けになりました。
ヘボのかんろ煮は、岐阜県のきょう土料理で、ヘボはクロスズメバチという種類のハチの呼び名です。目印をつけたヘボを追いかけ、巣のありかをつきとめることをハチ追いと言うそうです。そして、その巣を大きく育て、巣ばんからハチの子を取り出し煮つけた料理がヘボのかんろ煮です。
ぼくが、本の中でとても印象に残った場面は、人々の笑顔です。ヘボを追いかけ、育てハチの子抜きの作業をし、食べる。大変な作業のはずなのに、そこに関わるすべての人が幸せそうな笑顔でした。お店では、何でもすぐに手に入る今、大変な思いをしてハチを手にするのはなぜだろうと考えました。そこには、ただ伝統を守るというだけではなく、仲間と一つの目的を目指す時間があるからだ、とぼくは気づきました。ヘボのかんろ煮を作るには、ハチ追いからハチの子抜き作業まで、一人ではなく仲間や家族との協力が必要です。
ぼくも、友だちと協力して一つの目標に向かって進むとき、勇気が出て自然と笑顔になります。一人では難しいことも友だちがいるからこそ、成しとげられるのです。写真から伝わる幸せそうな笑顔は、同じ目的を持つ仲間と幸せな時間を一緒に過ごすことで生まれるのだと思いました。
本の中には他にも、ヘボの炊き込みご飯、ヘボ五平もち、ヘボかま飯、ヘボの子のびん詰めがのっていて、こんなにも多くのヘボ料理があることにおどろきました。むかしの人々が貴重なタンパク源として、ヘボをつかまえ、工夫をしてきたことが伝わってきます。食べることは生きることだったむかしから、人間の体と土はつながっていると考えられてきました。だから、地元の旬の食材や伝統食が身体に良いと大切にされてきたのです。
ぼくの自まんは、体が丈夫なことです。これは、小さいころから祖父が心を込めて作ってくれた無農薬野菜を食べていることが、関係していると思っています。祖父が季節ごとに送ってくれる野菜はふぞろいだけれど、味が濃くて、香り高く本当においしいのです。
土地には、その地域の気こうや、歴史につちかわれた食材があります。そして、人々が自然の恵みに感しゃしながら、元気に過ごしていくために知恵をしぼり、工夫をしながら受けつがれてきたものが、伝統料理です。だから、ぼくたちはその伝統を受け継ぎ、未来へ引き継ぐことが大切なのだと感じました。
今を大事にする積み重ねが、いつか伝統となっていくと思うと、みんなと食べる毎日の食事をとても大切に感じるようになりました。いつか岐阜県に本物のヘボ料理を食べに行こう、そして、これからは、自然の恵みに感謝しながら、周りの人々とのきずなをもっと大切にしよう、と心にちかいました。
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●読んだ本「季節のごちそうハチごはん」(ほるぷ出版)
横塚眞己人・写真と文
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