読書の魅力を感じ、楽しく読書感想文に取り組んでもらおうと、毎日新聞社は2日、トークイベント「作家・凪良(なぎら)ゆうさんと探る『読書感想文』の楽しみ方」を東京都世田谷区の昭和女子大で開催した。小説「汝(なんじ)、星のごとく」で、自身2度目の本屋大賞を受賞した凪良さん、感想文指導のベテラン・博田かおりさん=東京都新宿区立津久戸小教諭=が、本の魅力や感想文を書くコツなどについて語った。司会は毎日新聞人事本部の三木陽介・採用担当部長が務めた。【構成・篠崎真理子、写真・大矢伸一】
——凪良さんは子どものとき、どこで本を読んでいましたか。
凪良さん 家の近所に小さな書店があって、小学校の帰り、毎日通っていました。そこの本屋さんは、子どもが立ち読みをしていても許してくれて。お小遣いをもらった時は、厳選した1冊を買いに走りました。閉店してしまいましたが、今でも思い出します。
作家・凪良ゆうさん
——普段の執筆活動で気を付けていることはありますか。
凪良さん 世の中には楽しいコンテンツがあふれているので、最近の作家は、早い段階で読者を物語の世界に引き込む力が求められていると感じます。冒頭で波に乗ってもらえるよう、最初の1行や1㌻は特に大切にしています。また書き上げた作品は、何度も音読します。つまずいた箇所は、意味が通っていてもリズムの良い言葉に直します。
——どうやって表現力を磨いていますか。
凪良さん インスピレーションをどこで受けているのかよく質問されますが、普段から、いつどこにいても何かを受け止められる柔軟な心を持つように気をつけています。それと、語彙(ごい)力を増やすためには、普段から本を読むことが大切だと思います。
博田さん 本をたくさん読んでいる子どもほど、表現力が豊かだと感じます。
——夏休みに読書感想文に取り組む子どもも多いですが、選書のコツはありますか。
博田さん 自分の経験や、考えと重なる本を選ぶと書きやすいと思います。指導では、1学期から感想文を意識して「これだったら、共感できるから書けそうだな」という本を数冊選んでおくといいよと伝えています。
教諭・博田かおりさん
——いざ感想文を書こうとしても、ペンが止まってしまうという子どももいます。
博田さん 構成を考えてから、書き始めるといいと思います。本の内容を書くだけだと、本の話ばかりになってしまいます。半分くらいは、本を読んだ後に自分の経験を振り返ってどう感じたかや、どういう発見があったかを書くと、バランスが良くなります。自分のことを語れるのが、感想文の良さです。
——周囲の大人がサポートできることはありますか。
博田さん 親御さんがファシリテーター(進行役)になって、お子さんに「これはどんな本なの」「どんなエピソードがあったの」と質問を重ねてみてください。答えをホワイトボードなどにメモして、読み返してあげると、お子さんも気付きがあるし、頭の中が整理されていきます。
凪良さん 聞き出してくれるのは、考えがまとまっていいですね。感想文以外でも活用できそうです。
——感想文に取り組む子どもたちにメッセージを。
凪良さん 感想文は自分の作品を通じて、その本の素晴らしさを人に伝える機会になると思います。私は苦手でしたが、もし今やるとしたら、読んでもらう人を念頭に置いて書きます。同じ本を読んだ人の作品も読めますし、他の人がどう感じたか、共有できる楽しさもありますね。
凪良ゆう(なぎら・ゆう)さん…1973年、滋賀県生まれ。バンド活動などを経て2007年デビュー。「流浪の月」で20年、「汝(なんじ)、星のごとく」で23年に2度本屋大賞を受賞。
博田かおり(はかた・かおり)さん…1977年生まれ。2002年、東京都公立小学校教員に。新宿区立津久戸小学校に赴任して学校図書館教育の基礎を学ぶ。司書教諭免許を取得し、学校図書館利活用指導や調べる学習の実践を重ねている。